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「日本郵政の減損計上」記事を読んで思うこと

本日の日経新聞では「日本郵政、減損最大4000億円を一括償却」と報じられています。

当社の株式は保有していませんが、減損について思うことを書きたいと思います。

■のれんとは
今回の減損対象は「のれん」となっています。

のれんとは企業のM&Aの際に発生する「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額です。
無形固定資産としてB/Sに計上されます。

日本の会計基準ではのれんは規則的な償却(20年以内)が求められています。
IFRSでは規則的な償却を行わず、のれんの価値が損なわれた時に減損処理を行います。

余談ですが、M&Aに積極的な会社はのれんの償却を避けるためにIFRS導入を進めるケースがみられます。
(のれんの償却は費用に計上されるため、償却停止は利益の底上げ要因となる)

なお、時価評価純資産>買収価額の場合は、「負ののれん」として当期のP/Lに特別利益として計上されます。

■なぜ減損となるのか
業績悪化等により、のれんの価値が棄損していると判断された場合に減損が必要となります。

発生の要因として、以下の4点が挙げられます。
どれか一つに起因するというよりは複合的に絡み合って減損となるケースが多いかと思います。

①高値掴み
ビット方式の場合などに発生しやすいです。
この案件をライバルに取られるわけにはいかない、中計でM&A枠を取っていてやる必要がある、
という理論的ではない理由で価格は吊り上がっていくものなのです…

②バリュエーションが甘い
①を正当化するために実施されます。
市場の見通しと一致しない成長、過大なシナジー、ターミナルバリューへの依存が挙げられます。

③買収後の環境変化
分かりやすい例でいうと、資源価格の暴落などでしょうか。

④買収後の相乗効果が予定通り発揮できていない
日本企業にとって一番の課題はここにあると思います。
本日の日経記事にも以下の記述があります(本当かどうかは知りません)。

郵政自身に海外の物流施設などを運営するノウハウは乏しく、買収後も思うような協業による利点を引き出すことができていないのが実情だ。


PMI(Post Merger Integration)という言葉がありますが、日本企業は総じてこれが苦手です。
ノウハウがない、人材もいない。失敗して当然です。

ではどうすれば良いかというと、まずは小さいM&Aからはじめて、数をこなす。
その中でノウハウと人材を蓄積させるしかないと思います。

■個人投資家としての視点
以下の観点から投資先のM&Aを評価しましょう。

・買収価格は妥当か
上場している場合は株価からのプレミアム、EBITDA倍率は同業の他事例と比べて適切か
(参考:日本郵政のトール社の場合、株価のプレミアムは49%、EBITDA倍率は11倍)

・過去の買収事例はどうか

・期待される相乗効果は実現可能か

大型M&A実施時には資金調達や失敗への懸念から株価は一時的に下がる傾向にあります。
その時にしっかりと見極めて買いを入れることができれば大きなチャンスかもしれませんね(=゚ω゚)ノ
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RYU

Author:RYU
某企業で財務の仕事をしています
その知識を投資に活かしています

日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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☆ダイヤモンド・ザイ2018年6月号
☆ネットマネー2017年8月号
☆マネーポスト2017年春号、夏号

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